買い物で後悔ばかりしてしまう心理|後悔しているのは「物」ではない

「あーあ、やっぱり買わなきゃよかった」。袋を下げてお店を出た瞬間に、気持ちが冷めていく。家に着いて値札を外しながら、似たような服がクローゼットにあったことを思い出す。夜になって通販アプリの購入履歴を開いては、自分で自分にため息をつく。そんな経験はありませんか?
買い物の後悔は心理のどこから来るのか|先に結論を
結論を先にお伝えすると、買い物の後悔は、買った物そのものから生まれているわけではありません。あなたが後悔しているのは、それを買ったときの自分の状態のほうです。エネルギーが枯れた状態で支払ったお金は、金額の大小にかかわらず、あとから重たく感じられる傾向にあるからです。買ったあとに押し寄せるこの後悔は、英語ではバイヤーズリモース(購入後の後悔)と呼ばれています。
買い物で後悔しやすい人の特徴
まずは、こんな出来事に心当たりがないかどうかをみてみてください。
- 買った直後に「やっぱり要らなかったかも」と気持ちが冷めてしまうことがある
- 後悔するとわかっていながら、決済ボタンを押してしまうことがある
- 家に似た物があるのに、また同じような物を買ってしまうことがある
- 疲れた日や嫌なことがあった日の夜に、まとめて買ってしまうことがある
- セールや期間限定という言葉をみると、急がないと損だと感じてしまいやすい
- 買った物を使う時間よりも、買うかどうかを迷っていた時間のほうが長い
- 一度決めたあとも、もっと良い選び方があったのではないかと探し続けてしまう
- 自分が欲しいかどうかよりも、周りの人が持っているかどうかで決めてしまうことがある
これらに共通しているのは、金額の判断を間違えたわけではなく、買うと決めた瞬間に、ご自身の気持ちが乗っていなかったという点です。もし、1つでも心当たりがあれば、その原因と対処法を紐解いていきましょう。後悔がどこから生まれているのかを知り、後悔した買い物をお金の『4つの窓』で仕分けし直すことで、次のお買い物の際の適切な基準がわかるようになりますので。
後悔は、買った物ではなく買った瞬間の状態から生まれる|認知的不協和という心のはたらき
買った直後に後悔がはじまるのは、心が矛盾したままの状態に耐えることができないからです。心理学では、これを認知的不協和と呼んでいます。アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーが1957年に『認知的不協和の理論』(末永俊郎監訳・誠信書房・1965年)で体系化した考え方になります。
その2年後に発表されたフェスティンガーとカールスミスの実験報告では、1ドルという少ない報酬で、退屈な作業を「面白かった」と人に伝える役を引き受けた方ほど、あとから本当にその作業を面白かったと評価し直していたことが確かめられています。これはお金でいうと、すでに支払ってしまって変えることのできない事実があるときに、人は評価のほうを書き換えて辻褄を合わせる、ということを意味します。
例えば、イソップ童話の「すっぱいブドウ」に出てくるキツネのお話です。どうしても手の届かない高いところにブドウがあると、キツネは「どうせ、酸っぱいんだよ、あんなブドウ」と言い残して立ち去ります。本当は食べたいという気持ちに蓋をして、ブドウの価値のほうを下げてしまう。そうすることで、心のなかの矛盾を消してしまうわけです。
買い物のあとにも、これと同じメカニズムが働きます。「欲しくて買ったのだから価値があるはず」という気持ちと、「お金が減ったのだから良くないことをした」という気持ちが、心のなかに同居したとき、支払ったお金はもう戻ってきませんので、変えることができるのは物への評価だけになります。
買う際に気持ちが満たされていた買い物なら、心は「やっぱり良い買い物だった」と評価を上げて矛盾を解消しようとします。一方で、不安や焦りから手を伸ばした買い物には、評価を上げる材料が見つかりません。すると心は、キツネと同じように動くのです。つまり、買った物の価値を下げようとする。「やっぱり要らなかった」という後悔は、矛盾を消そうとして起きている心の正常なはたらきなのです。
ですので、買った直後に後悔がやってくること自体は、気持ちの持ちようで止められるものではありません。ただ、この矛盾が長く残る買い物と、すぐに消える買い物には違いがあります。すぐに消えるのは、買った瞬間の気持ちと、支払った理由が一致している買い物です。この場合、心は評価を上げるほうへ動くだけで済みますので、矛盾はその場で消えていきます。つまり、買ったあとの気持ちの違いを分けているのは物そのものや物の値段ではなく、買った瞬間の自分自身の状態のほうなのです。
エネルギーが枯れているときに、手が伸びてしまう
では、その「気持ちが乗らないまま買ってしまう状態」は、どうして生まれるのでしょうか?原因は、意志の弱さではなく、エネルギーの枯渇にあります。エネルギーが枯渇していると、人は怖れや不安、焦りから衝動買いに走ってしまいやすくなります。私自身も、そうした買い物を過去に多々経験してきました。では、エネルギーはどこから漏れていくのでしょうか?私の経験上、特に多いのが、答えのない問いを頭のなかで繰り返しているときだと言えます。
例えば「これから景気はどうなるんだろう?」「この先の生活、大丈夫かな?」「将来、お金が足りなくなったらどうしよう?」などなど。ですが、こうした問いにはそもそも答えがありません。そのため、考えるだけエネルギーの無駄で、エネルギー漏れの原因になりやすい。結果として、エネルギーが減った分だけ、人は正体不明の不安に取り込まれやすくなっていって、そこへ、一瞬で気分を変えてくれそうにみえる、お手軽な手段としての買い物が現れるのです。
お金を使った瞬間だけは、確かに不安が薄れます。この一瞬の効き目には、脳の仕組みも関わっています。私たちの脳には報酬系(快や意欲に関わる回路)があり、そこでドーパミンというホルモン物質が働くことで「もう一度やりたい」という感覚が生まれてくることがわかっています。ここで押さえておきたいのは、ドーパミンが最も強く出るのは、手に入れた後ではなく、手に入るかもしれないと期待している最中だという点です。
これは神経科学者のウォルフラム・シュルツらが1990年代に報告したサルの実験(Schultz, Dayan & Montague, 1997)で確かめられた性質になります。お金でいうと、ピークは決済ボタンを押すまでで、届いた商品の箱を開ける頃には、期待のほうはもうすっかり小さくなっている、というわけです。
ここで本当に手に入れたかったのは、不足しているエネルギーであり、不安を埋めること、でした。あとから「良い買い物だった」と思えないのは、はじめから物が目的ではなかったからです。ですので決済が終わっても、先ほどの矛盾は消えません。後悔するとわかっていても、つい物に手が伸びるのは、エネルギーが減っているサインであり、ここに気づくことがとても重要なのです。
不安を買い物で薄める、という対処を繰り返していると、徐々に同じ金額では効き目が薄くなっていきます。結果として回数も金額も増えやすくなります。買い物依存と呼ばれる状態は、こうやって生まれてくるのです。
もしも、借金をしてまで買ってしまうことがやめられなかったり、買ったことを家族に隠してしまう、といったことが起きているのなら、お金の使い方の範囲を超えています。その場合は、お早めに専門の相談窓口や医療機関を頼ることをオススメします。
買う前の衝動そのものの扱い方については、欲しいものがないのに買いたくなる心理についてお伝えした記事で詳しく触れています。この記事でお伝えしたいのは、後悔の残った買い物にこそ「あのとき、自分のエネルギーが枯れていた」という気づきやヒントを得る手がかりになる、ということです。
ちなみに、答えのない問いが頭に浮かんだときには、「今の私に100%コントロールできることって何だろう?」と問い直すと効果的です。この問いには答えがありますから、エネルギーを漏らさずに済みやすいですので、ぜひ試されてみてください。

後悔は、お金の使い方が下手な証拠ではない|足りなかったのは『ものさし』
後悔した買い物を思い返すとき、多くの方が「良い買い物だったのか、悪い買い物だったのか」で測ろうとしがちです。例えば、美味しそうだと感じて買ったいちごを、冷蔵庫の奥で傷ませてしまった、通販で「これ素敵!」と買った洋服が、届いたら思ったのと違った、おつきあいで買った本が、読まれないまま積まれている、などなど。確かに、どれも後悔の残りやすい買い物ですが、良し悪しで測ろうとすると、答えはいつまで経っても出ません。
理由は、同じ物を同じ金額で買っても、買ったときのご自身の状態によって答えが変わるからです。ここまでお伝えしてきたとおり、後悔を分けているのは物でも金額でもなく、支払った瞬間の自分自身のエネルギーの状態でした。ですので、お金の使い方が下手だったわけではありません。そこに足りなかったのは、お金を上手に使うための『ものさし』のほうなのです。
そのものさしは2本あります。1本目は「消費なのか、投資なのか」。2本目は「そのとき、自分のエネルギー(体温)は高かったのか、低かったのか」。この2本を縦横に組むと、お金の使い方は4つに分かれることになります。
あなたの支払いは、消費に寄る側?それとも投資に寄る側?

後悔した買い物を『4つの窓』で仕分けし直す|多くはC事故投資とD必要経費に集まる
この2本のものさしを1枚の図にしたものが、お金の『4つの窓』です。横軸に消費と投資、縦軸にエネルギー(体温)の高い低いを取って、お金の使い方を4つに分けます。
- A=自己投資(投資×高)。自分の未来の可能性と『あり方』を育てるために使う投資になります。
- B=自己満足(消費×高)。自分の体温が上がる、心地よい消費のことです。
- C=”事故投資“(投資×低)。自己投資だと思って支払ったのに、結果には何ひとつ結びつかず、お金だけが消えてしまった出費になります。
- D=”必要経費”(消費×低)。気持ちが乗らないまま出ていく消費のことです。暮らしを回すために支払い続けている家賃や光熱費が代表ですが、単発の買い物もここに入ります。
ここで、もう1組のお金を見分ける言葉を添えておきます。数字で管理することのできる冷たいお金(信用から生まれるお金)と、目にみえない『信頼残高』が温かいお金(信頼から生まれるお金)です。
体温の高いAとBは、自分の可能性や人との関係性が手元に残りますので、その関係性が『信頼残高』となって、温かいお金を育てることへとつながることが期待できます。一方、体温の低いCとDは、数字が出ていくだけで終わりやすい使い方です。ただし、Dが要らないという意味ではありません。家賃や光熱費のように、生活の『土台』を支えている支払いは必要ですので。
それでは、後悔した買い物を思い出せるだけ紙に書き出して、AからDのどこに入るのかを仕分けし直してみましょう。おそらく、その多くはCとDに集まるはずです。
Cに入るのは、学びになるはずだと申し込んだのに一度も開かなかった教材や、儲かると聞いて買ったものの大損した投資商品などになります。私がFXで溶かした1,000万円超も、まるごとここに入ります。Dに入るのは、使っていないサブスクや惰性で続いている固定費と、不安から手を伸ばした買い物などです。名前こそ必要経費ですが、「支払わざるを得ない」と思い込んでいるだけで、実際には見直すことのできる無駄が紛れている場合が多い場所でもあります。
面白いのは、同じ金額の同じ物でも、買ったときのご自身の状態によって入る窓が変わる、という点です。美味しそうだと感じて買って、その場で味わったいちごはB自己満足になります。でも、不安を埋めるために買って、そのまま傷ませてしまったいちごは、気持ちが乗らないまま出ていった消費ですので、Dに分類されるでしょう。冒頭でお伝えした「後悔しているのは物ではなく自分の状態」というのは、こういうことなのです。
そして、ここが大事なポイントなのですが、Cを見つけても、ご自身を責める必要はないということ。事故はもう起きてしまっていて変えることができません。できるのは、その経験から学び次に活かすことと、物そのものに片をつけること(次の章でお伝えします)なのですから。
見直しで効くのはDのほうです。暮らしに必要な支払いはそのまま残したうえで、惰性で続いている固定費や、不安から出ていった買い物を見直して、浮いたぶんを、体温の上がるB自己満足へ流していくのがオススメです。Dの見直しが、そのままBの原資になります。自分のためにお金を使うことのできない方ほど支出はDに偏りがちな傾向にあります。このお金の使い先が変わることで、お金の景色そのものが変わっていくことになります。

後悔して買った物そのものは、どう扱えばよいのか?
仕分けが済んだら、後悔して買った物そのものにも片をつけてしまいましょう。理由は、手元に置いたままにしておくと、目に入るたびに後悔を思い出すことになるからです。順番は3つです。
1つめは返品です。未開封でタグや箱が残っていて、購入から日が浅いのなら、まずは返品することができないかを確かめます。通販サイトには返品条件が書かれていますし、店頭でもレシートがあれば応じてくださる場合もあります。「一度買ったのだから」と遠慮する必要はありませんので、まずは確認してみましょう。
2つめは売却です。返品の条件から外れた物は、フリマアプリや買取店へ出してみましょう。使った金額がそのまま戻ってくることはほとんどありませんが、一部でも戻り、その物が次に使ってくださる方の手へ渡るのなら、それだけでも意味がありますので。
3つめは手放すことです。値段のつかない物は、誰かに譲るか処分しましょう。いわゆる断捨離です。ここで足を引っ張りがちなのが「使ったお金がもったいない」という気持ちです。ですが、お金はもう戻ってきませんし、その事実を変えることもできません。であれば、物を手放して、後悔を思い出す時間のほうを減らすほうが、精神衛生上、よっぽどいいと言えるでしょう。
次のお金の使い方は「体温が上がるのか」で選ぶ
物の片がついたら、次は選び方です。次にお金を使う基準は1つだけで十分です。「この使い方で、自分の体温(エネルギー)が上がる感じがするかどうか?」。この問いにYesのほうへと優先的にお金を使っていきましょう。
私自身の例をお話しします。私が主催するオンラインサロンのメンバーの方々とのランチ会の途中で立ち寄った酒蔵で、海底で熟成された限定のお酒に一目で心を奪われ、皆さんと一緒に楽しく飲んでいる場面が脳裏に浮かんで即購入したことがありました。神棚にお供えするための箱も一緒に購入した結果、お支払いは5ケタになりました。
普段の私はおトクセンサーがよく働くので、衝動買いは滅多にしません。それでも迷わなかった決め手は、お酒の味でも等級でもなく、そのお金を使った先に、自分以外の人たちと一緒に楽しむシーンがみえたことだったのです。お金を使った先に人がいるかどうかは、体温が上がるかどうかと強く結びついているのだと、様々な経験から私は確信しています。
とはいえ、はじめから5ケタを動かす必要はありませんので、ご安心ください。金額は小さくて大丈夫です。数百円のコーヒー1杯で構いませんので、体温の上がるほうを感じて選んで支払う練習をされてみてください。
大事なのは金額の大きさではなく、この体温が上がるお金の使い方を何度も重ねていくことなのです。この経験を積み重ねていくうちに、怖れや不安、焦りから買ってしまうクセが、少しずつ薄れていきますので。お金を使うことへの恐れがとにかく強いと感じる方は、お金を使うのが怖い気持ちについてお伝えした記事もあわせてご覧ください。
後悔した買い物ほど、あなたが何に体温が上がるのかをはっきり教えてくれる
後悔は、決して消さなければいけない感情ではありません。もちろん、後悔を味わい続けましょうという意味でもありません。後悔は、自分が何に体温が上がるのかを教えてくれる、自分を知る手がかりとして扱うくらいが、ちょうどいいのです。
お金は、今の自分の『あり方』がスクリーンに映し出された影のような存在です。実体はあくまであなたの『あり方』のほうで、そこに映る影だけをいじっても、実体は変わりません。買い方のテクニックをいくら覚えても後悔が消えてなくならないのは、実体ではなく影のほうを動かそうとしているからなのです。
ぜひ一度、後悔した買い物が4つの窓のどこに入るのか仕分けしてみてください。まずは1つか2つだけでかまいませんので。そうすることで、自分自身にとって最もいいお金の使い方が次第にみえてくるようになりますので。あなたとお金との関係性が少しでも改善することを心から祈っています。
あなたが後悔しやすいのは、C事故投資の側?それとも、D必要経費の側?
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