「特に欲しいものなんてないのに、なんだか何か買いたい」。夜、布団のなかで通販アプリを開いて、セール一覧を上から下まで見ていく。気になった商品をカートに入れては消して、また別のページへ移動する。結局、何も買わないまま画面を閉じたのに、なぜだか少し疲れている。こんな夜を過ごしたことはないでしょうか?

先にお伝えしておくと、この感覚は、意志が弱いから起きているわけではありません。むしろ、必要なものがひととおり揃っていて、暮らしが安定している方ほど起きやすい現象だ、というのが私の実感です。

私は独立して10年以上、『お金モテ®』というお金との上手なつきあい方をお伝えしてきました。お金モテとは、お金を追いかけて稼ぐのではなく、自分のあり方を磨くことで、人を通じてお金のほうが自然とやってくる自分になる、という考え方です。この記事では、「欲しいものがないけど何か買いたい」という気持ちの裏側に隠れている原因を一緒に見ていきたいと思います。

「欲しいものがないけど何か買いたい」の答え|先に結論を

「欲しいものがないけど何か買いたい」という状態は、モノが欲しいのではなく、買うという行為を通じて自分を満たそうとしているサインです。満たそうとしているのは、多くの場合、毎日頑張っている自分自身を認めてあげたい、という気持ちだと言えます。ですので、必要なのはこの衝動を我慢することではなく、自分が何にお金を使うと満たされるのかを知ることなのです。

ということで、まずはご自身が次のどれに当てはまるのかをチェックしてみてください。

  • 欲しいものを聞かれても答えることができないのに、ショッピングサイトを眺める時間だけが増えている状態。
  • 買う前が最も楽しくて、商品が届いた頃には興味が薄れている状態。
  • 人へのプレゼントはすぐ決められるのに、自分のものになると悩んでしまう状態。
  • 金額の大小にかかわらず、買ったあとに「無駄遣いだったかも」という気持ちが残る状態。

いかがでしょうか?そもそも、欲しいものが浮かんでこない背景には、いくつかの事情があります。必要なものがひととおり揃っていて、現状に満足している場合もありますし、年齢とともに、モノを手に入れることへの執着が落ち着いてきているケースもあります。毎日が多忙で、自分の好みをゆっくり考える時間が取れていない、という場合も少なくありません。どれも不調のサインではありませんので、どうかご安心ください。

1つでも当てはまったとしても、ご自身を責める必要は一切ありません。これは買い物のクセのお話ではなく、お金の使い方のクセのお話だからです。以下、その衝動が起きている仕組みと、我慢以外の対処法、そして満たされなさの正体を順にお伝えしていきます。

カートに入れて、結局閉じた夜|「何か買いたい」衝動とドーパミンの仕組み

冒頭の場面を、もう少し細かく振り返ってみます。思い返していただきたいのは、そのとき気持ちが最も高まったのは、どの瞬間だったのか、という点です。多くの場合、それは商品が届いた瞬間ではなく、「これ、いいかも」と感じてカートに入れた瞬間のほうでしょう。

脳の報酬にかかわるドーパミンという物質は、実際に手に入れたときよりも、「手に入るかもしれない」と期待している段階で多く出ると言われています。私は脳の専門家ではありませんので、詳しい仕組みまではわかりません。それでも、自分自身の買い物を振り返ってみても、実感として腑に落ちます。カートに入れた瞬間が最高潮で、決済を済ませた瞬間から気持ちは下がりはじめる。だからこそ、「買っただけで満足してしまう」ということが起きるのです。

以前、私がお伝えしている考え方を使って、模擬セッションをしていただいたことがあります。そこでは、こんな事例が次々と出てきました。美味しそうと感じていちごを買ったのに、食べる前に腐らせてしまった。通販で「これ素敵!」となって洋服を買ったのに、届いた後はそのままクローゼットに置いたままで一度も着ていない。おつきあいで購入した本が、読まないまま積み上がっている。どれも、支払うときの気持ちと、そのあとに残ったものがずれてしまった、という点で共通しています。

ここで1つ、識別していただきたいことがあります。というのも、カートに入れた瞬間の気分の高まりには、性質の違う2つの要素があるからです。1つは、その商品や、それを味わっている時間そのものへの期待です。もう1つは、今、下がっている気分を盛り上げたいという、買う行為そのものへの期待です。このうち後者は、支払いを終えた瞬間から気分は下がりはじめます。ところが厄介なことに、この2つは、支払っている瞬間では見分けがつきにくいのです。そして、どちらの高まりで買ったとしても、腐らせてしまうという同じ結果になることがあります。ですので、結果だけを見て、どちらだったのかを見極めることはできません。

そして、買う行為そのものへの期待は、特に、1日の終わりに気持ちが下がっているときほど起きやすくなります。疲れているとき、退屈なとき、誰かと話したかったのに話せなかったとき。そんなときに手っ取り早く気分を上げる手段が、買い物なのです。ですので「何か買いたい」という気持ちは、物欲というよりも、自分を満たすための手段として立ち現れていることが多いと言えるでしょう。

「これって買い物依存症?」|衝動買いと依存の境界線、見逃したくないサイン

ここまで読んで、「自分は依存症なのでは」と心配になった方もいらっしゃるかもしれません。まずお伝えしておきたいのは、私は医療の専門家ではありませんので、診断についてはわかりません、ということ。その上で、一般に注意が必要だと指摘されているのは、次のような状態です。

  • 生活費や貯金に手をつけてまで、買い物が続いている状態。
  • 買ったことを家族に隠している、届いた箱をすぐ片づけてしまう、という状態。
  • 買ったあとの強い後悔を消すために、また次の買い物をしている状態。

特に3つめのループに入っている場合には、ひとりで抱え込まずに、早めに信頼できる第三者へ相談されることをオススメします。理由は、放置していると苦しい現状がずっと続くことになるからです。

一方で、「欲しいものがないのに何か買いたくなる」という段階は、そこまで至っていないケースがほとんどです。私が境界線として見ているのは、使った金額の大きさではありません。買ったあとに、自分で自分を責めているかどうかのほうです。買ったあとに「これは自分にとってよかった」と感じているのなら、金額が小さかろうと大きかろうと、それを浪費と呼ぶ必要はないと私は考えています。逆に、買うたびに自己嫌悪が残り、その嫌悪感を打ち消すためにまた買っているのなら、金額が数百円でも、そこには見逃したくないサインが出ていると言えるでしょう。

衝動は我慢では止まらない|一晩置く・24時間ルールが効く本当の理由

では、どうすればこの衝動とつきあっていくことができるのでしょうか?多くの方が最初に試されるのが、「買わない」と決めて我慢する方法です。ところが、これはダイエットのリバウンドのように、元に戻ってしまいやすいのです。理由は、湧いてきた感情は、消そうと決めたところで素直に消えてくれるものではないからです。むしろ「買ってはいけない」と禁止するほど、「買いたい」という気持ちは増すことでしょう。

そこで広く知られているのが、カートに入れたまま一晩保留にしたり、24時間待ってから決済するという方法です。この2つが効くのは、我慢するための方法ではなく、先ほどお伝えした2つの気分の高まりを、時間を味方にすることで仕分けをしてくれる方法だからです。商品そのものへの期待の高まりは、一晩たっても残り続けます。一方で、下がっていた気分を上げたかっただけの高まりは、翌朝には引いています。

24時間後にもう一度、自分に聞いてみて、まだ気持ちが動いているのなら買いましょう。一方で、気持ちが消えているのなら、欲しかったのはその商品ではなかった、というだけのこと。ここが我慢と決定的に違う点です。我慢は「買わない」だけが正解ですが、この方法では「買う」も正解になります。どちらに転んでもご自身を責めずに済む、という点が何より大きいのです。

もう1つ、我慢とは違う対処法をお伝えします。それは、カートに入れて眺めるだけで満足して、そのまま画面を閉じてしまうという方法です。冒頭の場面そのものですが、あれは失敗ではありません。気持ちが最も高まるのはカートに入れた瞬間ですから、その高まりだけを味わって閉じることができたのなら、1円も支払わないまま気分は上がっている、ということになります。ですので、カートを空にしなくてもかまいません。お気に入りに入れたまま並べておいて、ときどき眺めて楽しみましょう。その上で、翌朝も気持ちが残っているものだけを買えばいいのです。

そして、24時間待つあいだに、もう1つやっていただきたいことがあります。それは、買い物以外の方法で気分を上げてみることです。近所を15分だけ散歩してみる、湯船に少し長めに浸かってみる、家族や友人となにげないお話をする、好きな音楽をかけて音の世界を楽しむ、などなど、ご自身にあった方法であれば何でもOKです。どれもお金はかかりませんが、買い物と同じように下がっていた気分を上げるという効果が得られるでしょう。ここで気分が戻ったのなら、欲しかったのは商品ではなく、気分を上げる時間のほうだったということになります。

ここで思い出していただきたいのが、普段のスーパーでのお買い物です。いつもより価格が上がっていたら、買う量を減らすか、別の商品にするか、買うことそのものをやめているはずです。逆にセールや特売などで安くなっていたら、やったーと喜んで、多めに買うこともあるはずです。私たちはこの判断を、誰にも教わらずに毎日やっているわけです。つまり、判断力がないわけではないのです。「何か買いたい」のときだけその判断が働かなくなるのは、そのとき見ているのが商品ではなく、自分の気分のほうだからです。

ちなみに、私が使っているものさしは1つだけです。「この使い方をすると、自分の体温(エネルギー)が上がる感じがするか?」。これだけです。この問いがその場で答えをくれるのは、何のために支払うのかがハッキリしている場合になります。例えば私は少し前に、仕事で使っているAIサービスの契約を、月110ドルから月220ドルへ変更しました。日本円にすると、円安もあって月3万円をゆうに超えます。申し込むとき、私のアタマは「え、高くない?」とちゃんと言ってきました。わざわざ為替レートを調べて、日本円にするといくらになるのかまで計算してくれました。ところが、ココロのほうには反対する気持ちが少しも出てきませんでした。ですので、そのまま申し込んで、仕事に没頭したのです。

アタマの計算とココロの反応がずれたとき、私はココロのほうを見ます。理由は、計算で自分を納得させて買ったものには後から言い訳が必要になるのに対して、体温の上がった支払いには言い訳が一切いらないからです。

一方で、「特に欲しいものはないけど何か買いたい」というときには、この問いだけでは答えが出ません。先ほどお伝えしたとおり、商品そのものへ向かう気分の高まりと、気分を動かしたいだけの高まりは、支払う瞬間だけでは見分けがつきにくいからです。ですので、気分のほうが先に来ている場合には、体温が上がりそうな気がしたとしても、その場で答えを出さずに、24時間だけ待つことをオススメします。そうして翌日も同じ気持ちが残っていたのなら、それは商品そのものへ向かっていた気分の高まりだった、ということになります。

あなたが支払うときのものさしは、アタマ?それともココロ?

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「欲しいものがないけど何か買いたい」の正体は物欲ではなく、商品そのものへ向かう高まりと、下がった気分を動かしたいだけの高まりが混ざっている状態で、24時間だけ預けると、どちらだったのかを見分けることができる。

衝動が起きる前に手を打つ|メルマガ解除・SNS断ち・セール通知オフ

ここまでは、衝動が湧いたあとの対処法をお伝えしてきました。もう1つ効果的なのは、衝動そのものが起きにくい環境を先につくっておくことです。理由は、「何か買いたい」という気持ちは、自分の内側から勝手に湧いてくるだけではなく、外部の刺激から呼び起こされるケースが多いからです。

今日からできることは、次の3つです。1つめは、通販サイトから届くセールのお知らせメールを解除することです。2つめは、スマホの通知設定を開いて、買い物アプリのプッシュ通知を切ってしまうことです。3つめは、寝る前にはSNSは見ないことです。特に買った商品の写真が並ぶタイムラインは、「自分も何か買わなきゃ」という気持ちを強めます。全部やらなくてもかまいません。まずは1つだけ、今この瞬間にやってしまいましょう。それだけでも、買いたい衝動は減っていきやすくなりますので。

後悔しない買い物は、金額ではなく体温で選ぶ|消え物・実用品・経験

体温で選ぶ、と言われても最初はつかみにくいと思いますので、身近な3つで考えてみましょう。

1つめは、消え物です。美味しいパン、季節のお花、好きな香りの入浴剤、いつもは選ばない少し高い果物、気になっていたお店のコーヒー豆など、使えばなくなるものです。残らないから無駄だと思われがちですが、体温が上がるのなら立派なお金の使い方です。金額の目安は、迷わずに支払うことのできる範囲でかまいません。

2つめは、実用品です。毎日手に触れるタオルやマグカップ、書き心地のいいペン、毎晩顔が触れる枕カバー、家のなかで履いているスリッパなど、使う回数が多いものほど、支払ったお金の温度感が長く残ります。買い替える予定のなかったものほど、変えたときの変化に気づきやすいと言えるでしょう。

3つめは、経験です。会いたい人に会いに行く、行ってみたかった場所へ足を運ぶ、気になっていた展覧会を観に行く、近場の温泉へ日帰りで出かける、観たかった舞台のチケットを取る、といった使い方です。

このなかで最も残りやすいのは、経験です。理由は、有形のモノは古くなっていくのに対して、無形の経験は後からいつでも思い出として取り出すことができるからです。幸福度の研究でも、似たことが指摘されています。エリザベス・ダンとマイケル・ノートンの『「幸せをお金で買う」5つの授業』(古川奈々子訳・KADOKAWA・新版2026年/初版2014年、原著は『Happy Money』(Simon & Schuster・2013年))では、幸せにつながりやすいお金の使い方として、モノより経験を買う、自分へのご褒美にする、時間を買う、先に支払って後から味わう、他人に投資する、という5つが挙げられています。私が体温という言葉でお伝えしてきたことと、重なる部分が多いと言えるでしょう。

そして、先ほどのいちごの事例に戻ります。食べる前に腐らせてしまったあのいちごは、体温が上がる支払いだったのでしょうか?それを決めるのは、いちごの値段でも、食べることができたかどうかでもありません。カゴに入れたときの気分の高まりが、いちごを味わう時間そのものへ向いていたのか、それとも下がっていた気分を上げたかっただけだったのか、という点のほうです。

前者なら、それは体温の上がった支払いです。腐らせてしまったことは、次は買う量を調整しよう、という材料になるだけのことです。後者なら、欲しかったのはいちごではなかった、ということになります。とはいえ、すでに支払いを終えたいちごを、後から一晩置いて確かめることはできません。それでも、見分ける方法はあります。一晩置く方法が効くのは、気分を動かしたいだけの高まりが時間とともに引いていく、という性質を使っているからでした。この時間は、支払いを終えたあとも同じように流れています。ですので、今そのいちごを思い出してみて、「味わいたかった」という気持ちがまだ残っているのなら前者、思い出しても何も残っていないのなら後者だった、と見分けることができます。そして次に同じようにカゴへ手が伸びたときには、この見分け方を、支払う前に一晩置く方法として使えばいいのです。

私の経験上、お金と上手につきあうことができるようになるコツは、稼ぎ方や儲け方よりも、使い方のほうにあります。ここが腑に落ちると、収入額や資産額にかかわらず、お金の不安や苦労は解消へと向かっていきます。逆に、どれだけ収入や資産額が多くても、この温度感の違いがつかめていない場合には、お金の不安がいつまでも消えないでしょう。

あなたのお金の使い方は、体温が上がる側?それとも気分を動かす側?

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満たされなさの正体は物欲ではない|お金の『4つの窓』とB=自己満足

以前、私が学ばせていただいているコミュニティで、『お金の問題はお金が問題ではない』という場面を目撃したことがあります。ある男性の方が「年末年始にお金を使いすぎて、減ってしまったのが不安なんです」と相談されていたのですが、お話を伺っていくと、出てくる言葉は「お金が減っていくと妻が」「会社の経理の人に文句を言われそうで」といったものばかりでした。つまり、その方の不安の正体はお金そのものではなく、人間関係のほうにあったのです。

同じことが、「何か買いたい」にも起きています。買いたいのはモノではなく、その先にある何かのほうです。ここを見ていくために、お金の『4つの窓』というものさしをご紹介します。横軸に消費と投資、縦軸に体温(エネルギー)の高い低いを置くと、お金の使い方は4つに分かれます。

  • A=自己投資(投資×体温が高い)。これから先の可能性や『あり方』を育てるために支払うお金です。
  • B=自己満足(消費×体温が高い)。自分の体温が上がる、心地よい消費です。
  • C=事故投資(投資×体温が低い)。学びや成長のためだと思って支払ったのに、何も残らないまま、お金だけが手元から消えていった出費です。
  • D=必要経費(消費×体温が低い)。暮らしを回していくために、仕方なく支払っている出費です。

Cについては、私自身に苦い経験があります。昔の私は、株とFXで1,000万円超を溶かしました。当時の私が欲しかったのは、株でも外貨でもありません。「お金の不安から解放された自分」のほうでした。でも、焦りを抱えたまま、動いた結果、お金を失ってしまったのです。

ここが大事な点になります。「何か買いたい」と感じているとき、私たちが求めているのは、Bの自己満足です。ところが、自分にお金を使うことに慣れていない方ほど、支払いがDに偏っていきがちです。家賃、光熱費、通信費、保険料、誰かへのおつきあい、などなど。気がつけば、1か月のあいだに自分の体温が上がる支払いが1度もなかった、ということが起きるのです。そんなときに、「欲しいものはないけど何か買いたい」がやってきやすくなります。ですので、あれは物欲ではなく、Bの不足なのです。

とはいえ、Dは「支払わざるを得ないもの」だと思い込まれやすい窓でもあります。ところが実際に明細を眺めてみると、何ヶ月も使っていないサブスクリプション、惰性で続けている固定費、なんとなく入ったままの特約など、見直すことのできる出費が紛れていることが多いのです。そこを1つだけ解約して、浮いたぶんをBへ流してみることをオススメします。

Dの見直しが、そのままBの原資になります。金額は小さくてかまいません。小さく何度も繰り返すことに意味があります。理由は、お金を使うことへの恐れや不安は、一度に手放すものではなく、使いながら少しずつ慣れていくものだからです。

そもそも「欲しいものがわからない」という状態は、自分が何に体温の上がる人間なのかを、長いあいだ後回しにしてきた結果であることが少なくありません。お金モテには、満たす、調える、与える、受け取る、という4つのステップがあります。最初は「満たす」です。ここを飛ばして与え続けていると、受け取ることが苦手になり、お金の流れが停滞していきます。ですので、自分を満たすためにお金を使うことは、決してワガママでも贅沢でもなく、お金と良好な関係を築くための最初の1歩なのです。

なお、ここまでお伝えしてきた体温という言葉は、ご自身のエネルギーが上がるかどうかの主観的な体感を指しています。そして、ここからお伝えする『冷たいお金』『温かいお金』は、お金そのものの性質を区別するための呼び方で、別のものになりますのでご注意ください。

普段ひとくちに「お金」と呼んでいるものには、実は性質の違う2つがあります。1つは『冷たいお金』です。こちらは「信用」から生まれるお金で、数字として増えたり減ったりを管理することができます。家賃、貯金、資産額など、生活を守る『土台』であり、安心そのものです。この安心が確保されているからこそ、人は新しい挑戦へ踏み出すことができるのです。

もう1つが『温かいお金』です。こちらは「信頼」から生まれる『信頼残高』で、目にみえず、数値化もされない非言語のお金になります。この残高が厚い方は、周りの方に喜ばれ、感謝されながら、好きな仕事を続けていらっしゃいます。そして、この2つは、お金という面白い存在の裏表なのです。

その上でお伝えしたいのは、「何か買いたい」の奥にあるのが「誰かに認めてほしい」という気持ちだった場合、それは買い物では埋められない、ということです。理由は、信頼残高は商品からではなく、人との関わりを通じて増えていくものだからです。いくら買い物をしても満たされない場合は、必要なのは買う行為ではなく、人と会ったり、お話ししたりすることである可能性が高いと言えるでしょう。

4つの窓

「欲しいものがない」は欠けているのではない|次に選び直すのはお金の使い方

ここまで読んで、「自分には欲しいものがない」ということを、何か欠けていることのように感じてしまった方がいらっしゃるかもしれません。でもこれは、感性が鈍ったわけではありません。モノを手に入れることで自分を証明するステージを、すでに通り過ぎている可能性を示唆しているからです。

ですので、この場合は「買うか、我慢するか」という二択からは降りてしまうことをオススメします。この二択で考えているかぎり、買えば後悔が残り、我慢すれば満たされなさが残ります。どちらを選んでも、ご自身を責める材料が増えていくだけだからです。

そこで、3つめの選択肢をご提案します。それは、今の自分がどの窓にお金を使っているのかを確かめる、という選択です。すでに終わった支払いを後から仕分けることなんてできるのか、と思われるかもしれませんが、できます。いちごのところでお伝えしたとおり、気分を動かしたいだけの高まりは、時間とともに引いていきます。直近1か月の支払いには、その時間がすでに流れています。ですので、思い出したときに体温の上がる感じが残っているのかどうかで、後からでも見分けることができるのです。

直近1か月のカード明細や銀行口座の履歴を開いて、1つずつにA、B、C、Dのどれかを書き込んでみましょう。消費なのか投資なのかは支払ったときの目的で、体温の高い低いは、今思い出したときの体感で分ければ大丈夫です。迷うものは保留のままでかまいませんので。

書き終えたら、どの窓が最も多かったのかを振り返ってみてください。Dばかりの方は、自分に使うことを後回しにしてきた可能性が高いでしょう。Cが目立った方は、不安を打ち消すためにお金を使った可能性があります。どちらにしても、責める材料ではなく、これからどうすればいいのかの判断材料にしていけばOKです。

そして、次にカートへ何らかの商品を入れたときには、1つだけご自身に聞いてみましょう。「これを買うと、自分の体温は上がるのか?」。Noだと感じたのなら、そのまま画面を閉じてしまってかまいません。Yesだと感じたときにも、その場で決めずに、24時間だけ待ってみましょう。そして翌日もまだ同じ気持ちが残っていたのなら、そのときは迷わず買えばいいのです。気持ちが消えていたのなら、欲しかったのは商品ではなかった、というだけのこと。どちらに転んでも、大丈夫ですので。

おわりに

お金は、今のご自身の『あり方』がスクリーンに映し出された影のような存在です。買い物も、その影のひとつだと言えます。ですので、影を無理矢理変えようとしても、実体である『あり方』を変えないかぎり、同じままで居続けます。逆に、自分に意識を向けて、満たし調えることで『あり方』が変わりはじめると、影としての買い物やお金との関係性もよりよくなっていきます。

独立して10年以上この仕事を続けてきて、私が確信していることがあります。それは、お金の使い方が変わる方は、例外なく、まずは今のご自身を認め、満たし調えるところからはじめている、ということです。欲しいものが見つからない今のご自身を、どうかそのまま認めてあげてください。その上で、次の1歩として、ご自身のお金の使い方のタイプを確かめてみることをオススメします。お金との良好な関係性の築き方は人それぞれ異なります。ご自身のタイプを知ることで、あなたとお金との関係性がよりよくなることを祈っています。

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