お金のことばかり考えてしまうあなたへ|性格のせいではない

「今月、あといくら残っているんだろう」。信号待ちの間にスマホを開いて、銀行口座残高を確かめる。ついさっき見たばかりなのに、また見てしまう。そんな1日を過ごしてはいませんか?
レジに並びながら合計金額を暗算している。友人との食事中にも、心のどこかで「この店、高かったな」と計算している。夜、布団に入ってからも、来月の支払いを思い出して頭が冴えてしまう。お金のことばかり考えてしまう毎日は、思っている以上にエネルギーを消耗するものです。
私自身も、そんな日々に飲み込まれていた時期があります。会社員だった頃、株とFXで1,000万円を超える額を失いました。あの頃は、朝起きた瞬間からチャートのことを考え、寝る直前まで数字を追いかけていました。頭のなかがお金でいっぱいで、目の前にいる人の話が半分も入ってこない。今になって振り返ると、あれは「お金のことを考えていた」のではなく、「お金の不安に取り憑かれていた」のだと思います。
結論を先にお伝えすると、お金のことばかり考えてしまう理由は、必ずしもお金が足りないからだけではありません。「自分にはそれだけの価値があるのか」という問いを、お金という数字で確かめようとしているからです。理由は、一見すると、お金が最も分かりやすく、最も残酷に、自分の値打ちを採点してくれるように見えるモノサシだからです。
もちろん、返済や生活費のことで実際に困っていらっしゃる場合もあるでしょう。そのときに頼ることのできる相談先は、記事の終盤でまとめてお伝えします。
それよりも前にお伝えしておきたいのは、この状態が性格や我慢の量から来ているのではない、ということなのです。この記事では、独立して10年以上『お金モテ®』という考え方を伝えてきたなかで、実際によくいただく3つの問いに、一問一答の形でお答えしていきます。
- (問い1)お金のことが頭から離れないのはなぜなのか?
- (問い2)散財癖のある人の特徴は?
- (問い3)考えすぎの癖はどうやって治すの?
まずはご自身の今の状態を確かめ、お金と向き合うための2つの側面を整理したうえで、3つの問いへと入っていきます。そのあと、3つの問いが行き着いた先をお伝えして、最後に家計の見える化や固定費の見直しといった「やり方」まで、順にお伝えしていきます。
お金のことばかり考えてしまう毎日が、心と体に出しているサイン
まずは、ご自身の今の状態を確かめるところからはじめていきましょう。この1週間のうちに、次のようなことはありませんでしたか?
- 1日に何度も、銀行口座残高やクレジットカードの利用明細を見てしまう
- 買い物のあと、レシートを眺めながら「やっぱり高かったな・・・」と感じてしまう
- 友人や同僚の収入、家賃、持ち物の値段が気になる
- 誰かへの贈り物を選ぶとき、まず値段から見てしまう
- 寝る前に、支払いや将来のお金のことを考えて眠れなくなる
- お金の話題になると、体のどこかがこわばる感じがする
当てはまる数が多かった方ほど、ここで一息入れてください。これは性格の問題ではなく、頭のなかの容量の問題だからです。
人が1日に使うことのできる思考の量には限りがある、と言われています。そこにお金の心配が居座ってしまうと、残った容量だけで毎日を過ごすことになります。ですので、目の前の人の話が入ってこない、好きだったはずの本も読む気になれない、せっかくの休みの日に何をしたいのかが自分でも分からない、といったお金のことばかり考えてしまう本当のつらさは、お金が減ることそのものよりも、お金以外のことを考える余白が奪われていくところにあると言えるでしょう。
身体にも出ます。眠りが浅くなる、肩や顎に力が入りっぱなしになる、食事の味を感じにくくなる。こうしたことは、不安な状態が長く続いたときに起きやすいと言われています。とはいえ、体調の原因を見立てることは、私の領域外です。眠れない日が2週間以上続く、食欲が戻らない、朝どうしても起き上がることができない。そうした状態が重なるようでしたら、無理をせず専門医にご相談ください。
これは「病気」なのでしょうか
調べているうちに、「お金のことばかり考えてしまうのは病気なのだろうか」と、かえって心配になった方もいらっしゃるかもしれません。お金のことを考えること自体は、病気ではありません。暮らしを維持しようとするための、むしろ正常な働きだと言えるでしょう。ただ、いま挙げたような状態が重なっているとき——眠れない日が続く、食欲が戻らない、確認をやめたいのにやめられない——は、心の疲れが身体に出ているサインの可能性があります。気になるようでしたら、一人で判断せず専門家に診ていただくことをオススメします。
数字で見えるお金と、通帳に載らないお金〜『冷たいお金』と『温かいお金』
3つの問いへ入る前に、お金そのものについて、まずは整理させてください。お金というものには、性質のまるで違う面が2つあると私は考えています。
片方が『冷たいお金』。「信用」の上に成り立っていて、数字で管理することのできるお金を指します。毎月振り込まれるお給料、引き落とされる家賃、銀行口座残高、貯金額。日々の暮らしが成り立っているのは、この側面のおかげです。この『冷たいお金』の面が安定しているからこそ、明日の予定を落ち着いて立てることができるのです。
そして、もうひとつの側面が『温かいお金』です。「信頼」から生まれ、目にも見えず、通帳のどこにも数字として残らないお金で、私はこれを『信頼残高』と呼んでいます。誰かに喜んでいただき、感謝が重なっていった結果として、人を通じて巡ってくるお金のことです。この残高の厚い方ほど、周りの方との良好な人間関係が育っていて、感謝されながら好きな仕事を長く続けていらっしゃる傾向にあります。
この2つは、お金の裏表です。どちらが上や下という話ではなく両輪です。ただ、お金のことばかり考えてしまうとき、目に映っているのは、おそらく『冷たいお金』の数字のほうだと思います。残高、給料、値段、損か得か。数字は見えるがゆえに、いくらでも確認することができてしまうからです。一方の『信頼残高』は数値化されませんので、どれだけ厚く積み上がっていたとしても、目には見えません。
誤解のないように補足すると、『冷たいお金』を見ること自体、まったく悪いことではありません。むしろ、ご自身の『土台』をきちんと把握している方は強いと言えるでしょう。問題は、数字”しか”見えなくなったときに、その数字が自分の値打ちの通信簿のように感じられることにあります。

【問い1】お金のことが頭から離れないのはなぜなのか〜そこで働く4つの心理
先に答えをお伝えすると、お金のことが頭から離れないのは「お金が好きすぎるから」ではありません。むしろ逆で、お金を通じて自分の安全と価値を確かめ続けていないと落ち着かない、という状態のほうです。これまでご相談を受けてきたなかで、共通している心理状態を4つに分けてお伝えします。
1. 残高を「自分の価値の点数」として見ている
お金の心配が多い方は、残高が減ると気分が沈み、増えると少しだけ胸を張ることができる、という上下を毎日繰り返す傾向にあります。通帳の数字を家計の記録としてではなく、自分という人間の採点結果として受け取ってしまっているからです。
ですが、銀行口座残高が示しているのは、社会からの「信用」の記録にすぎません。あなたが誠実な方かどうかや、これまで誰をどれだけ喜ばせてきたか、といったことは1円も反映されていません。それでも数字を自分の点数として見てしまうと、残高が減っただけで「自分の価値が下がった」と感じることになります。これほど疲れる採点方法は、そうそうないでしょう。
2. 「なくなる」という恐れが、いつも先回りしている
お金のことが頭から離れない方は、まだ起きていない出来事に対して、先に不安を感じています。実際にはまだ足りているのに、「このままだと足りなくなる」という未来の映像が頭のなかで再生され続けているのです。
この恐れは、多くの場合、今の残高から生まれたものではありません。子どもの頃に家庭でお金の話がいつも緊迫していた、両親がお金のことで言い争っていた、「うちにはお金がない」と何度も聞かされて育った、といった記憶が、大人になってからも「お金はいつか突然なくなるもの」という設定として残っていることがあります。ですから、収入が増えても不安が消えない、という方が少なくないのです。
3. 他人のモノサシで、自分の暮らしを採点している
SNSを開けば、誰かの旅行や新居、年収や資産額のお話が流れてきます。同僚の家賃を知って落ち着かなくなる。友人の子どもの進学先を聞いて焦る。他人のモノサシが増えるほど、自分の暮らしは「どこかが足りないもの」に見えてくるものです。
ここで起きているのは、比較そのものよりも、比べる相手をご自身で選んでいないことのほう。向こうから流れてきた情報に、自動的に自分を並べてしまっている。この比べ方をしている限り、残高がどれだけ増えても落ち着くことはありません。上を見れば、いくらでももっと上に誰かがいるからです。
4. 受け取ることが苦手で、お金が詰まっている
意外に思われるかもしれませんが、お金の心配が多い方ほど、受け取ることが苦手な傾向にあります。人におごられると落ち着かない、褒められると「いえいえ」と打ち消してしまう、値上げをしようとすると、申し訳なさが先に立つ、などなど。
『お金モテ®』では、お金の巡りを「満たす → 調える → 与える → 受け取る」という4つのステップで見ていきます。まずはご自身を自ら満たすところからはじまり、『あり方』を調え、誰かへと与え、その先で受け取る。受け取ったものが、次にご自身を満たす原資になっていく終点のない循環の輪です。
この循環する流れのなかで、最も詰まりやすいのが実は「受け取る」部分。自分には受け取る資格がないと感じている方は、どれだけ与えられたとしても、入ってくる分を無意識に細くしてしまいがちです。結果、入ってこないので、また不安になり、ずっとお金のことを考え続ける、という悪循環から抜け出しにくいのです。
以上の4つを読まれてみて、心当たりが多かったかもしれません。ですが、これは決してあなたの欠点ではありませんので、どうか気にされないでください。どれも、真面目に、誠実に生きてきた方ほど陥りやすい、心理的な傾向にすぎないのですから。
なお、この状態がさらに進んで、お金を握りしめること自体がやめられなくなっている場合は、握りしめた手をゆるめていく道筋のほうで、5つのステップに分けて詳しくお伝えしています。
あなたとお金との最適な関係性は?
【問い2】散財癖のある人の特徴〜散財する方と節約する方に隠れている意外な共通点
こちらも先に答えをお伝えします。散財癖のある人の特徴は、「使いすぎる」ことではありません。足りない何かを、お金で埋めようとしていることのほうです。
ご相談のなかで伺う散財の様子には、いくつか共通点があります。買った瞬間が最も嬉しくて、届く頃には気持ちが冷めている。ストレスの強かった日の帰り道に、決まって何かを買っている。人に見せる予定のあるものにはお金を出すのに、誰にも見えない部屋の中のものは後回しになる。なぜ買ったのかを、自分でうまく説明できない。
ここで、ご自身に投げかけていただきたい問いがあります。「これまでの人生で、最も無駄だったと感じる買い物は何ですか?」
この問いを投げかけると、返ってくるのは、ありがちな高価なブランド品ばかりではありません。断れずに参加し続けた集まりの会費や、見栄を張って選んだ身の丈に合わない出費、取り残される気がして焦って申し込んだ高額な講座などなど。金額の大小はバラバラなのに、共通しているのがこの一点。お金を支払った瞬間に、ご自身の体温がまったく上がっていなかったということなのです。
私が溶かしてしまった1,000万円超も、まさにこれでした。会社を早く辞めたいという焦りだけで、必勝法らしきものに次々とお金を注ぎ込みました。あれは「増やすため」ではなく「不安を消すため」に使ったお金でしたので、増えるはずもなかったのだと、今ならよく分かるのです。
支出を仕分ける『4つの窓』
では、体温の上がる支出と、上がらない支出は、どこで見分けたら良いのでしょうか?私がご相談の場でお伝えしているのが、お金の『4つの窓』という仕分け方です。
支出を「消費か投資か」と「体温が上がるか上がらないか」の2軸で分類して、4つのマスに置いてみる。とてもシンプルな見立て法です。
- A:自己投資(投資×エネルギー高)=未来の自分の可能性を高めるために使うお金。学び、健康、人と出会う機会など。
- B:自己満足(消費×エネルギー高)=支払い終えたあとに、体温の上がっている使い方。行きつけの店での一杯、玄関に飾る気分の上がる一輪など。
- C:事故投資(投資×エネルギー低)=自己投資のつもりで支払ったのに、手元に何も残らなかった浪費。私の株とFXの1,000万円超は、まさにここでした。
- D:必要経費(消費×エネルギー低)=暮らしを回すために、消極的に支払い続けている出費。家賃、光熱費、通信費など。ただ、”払わざるを得ない”と思い込んでいるだけで、実は見直すことのできる無駄が紛れていることも多い場所です。
支出をこの4つの窓へと実際に仕分けしていく手順は、お金の4つの窓で詳しくお伝えしています。腰を据えて仕分けてみたい方は、そちらをご覧ください。ここでは、【問い2】に必要な範囲だけを。
先月の支出を並べてみると、面白いことが見えてきます。散財癖があるとご自身で感じている方は、Cの”事故投資”が多い傾向にあります。一方、節約家だと自認している方は、Dの”必要経費”にほとんどの支出が集まっていることが多いのです。一見すると真逆に見える2人ですが、この4つの窓に並べると、共通点がハッキリと浮かび上がってくるのです。
どちらも、Bの『自己満足』が空っぽだということ。つまり、自分の体温の上がる使い方を、ほとんどできていないのです。
散財する方は、買った瞬間の高揚はあっても、体温の上がらないまま大き目の金額を動かしている。節約する方は、体温の上がる支出を「無駄づかい」として真っ先に削っている。動き方は正反対でも、根にある心理は同じ。自分に使っていい、という許可を自分に出せていないのです。だから片方は埋めるために使い、もう片方は使わないことで守ろうとするのです。
空っぽのBに、小さく戻していく
ここでやることは、たったひとつ。空になっているBのマスに、意識的に何かを足していくこと。
金額は、ほんの少しで大丈夫。数百円でも構いません。むしろ小さいほうが、勇気も要らず、明日も明後日も続けやすいのでいいでしょう。いつものドリンクを1ランク上のものに変更する、帰りの電車を余裕のある座席で帰ってみる、など。その程度のことからスタートすればOKです。
選ぶときのモノサシはとてもシンプルです。「これを選んだら、自分の体温は上がるだろうか」。そうして、より体温が上がる感じがするほうへとお金を使っていきます。そのとき、頭で損得計算をはじめたとしたら、それはおそらくBではありませんのでご注意を。
数百円の選択を何度も重ねるうちに、「自分にもお金を使っていいんだ」という許可が身体へと染み込んでいって、少しずつお金が出ていくことへの不安がゆるんでいきますので。
【問い3】考えすぎの癖はどうやって治すの?ゆるめるための3つの手順
答えは、少し逆説的に聞こえるかもしれません。考えるのをやめようとしないことです。
「考えないようにしよう」とすると、その瞬間にもう考えはじめています。理由は、頭のなかで回っている心配というものは、押さえつけるほど、かえって強く出てくるものだからです。ですので、消そうとするのではなく、置き場所のほうを変えていきます。
ここで、考えすぎという現象の中身を見ておきます。考えすぎが止まらないのは、答えの出ない問いを反復しているからです。「この金額で、将来本当に足りるのだろうか」という問いには答えがありません。いくらあっても自信をもって「足りる」という結論には至りにくい問いだからです。そんな答えの出にくい問いを、頭のなかで何百回も繰り返している。それが、考えすぎの正体なのです。
では、その問いを1回まわすたびに、頭のなかでは何が起きているのでしょうか?「足りるだろうか」と問うたびに、ご自身の頭のなかでは、口座残高や年収などを引っぱり出してきて、合格か不合格かを判定しています。つまりこの脳内の反復作業は、同じ採点を1日に何十回もやり直している作業でもあるのです。しかも合格ラインがハッキリと定まってはいませんので、いつまでも合格が出ません。合格が出ないから、また最初から採点し直す。考えすぎがつらいのは、考える量の多さというよりも、毎回「不合格」と採点される側にご自身を置き続けているところにこそあるのです。
そこで、今日からできる、カンタンな3つの方法をお伝えします。
1. 心配を紙に書き出して、頭の外に出す
紙とペンを用意して、今、お金について心配していることを、思いつくまま全部書き出してみましょう。順序立てて、キレイに書き出す必要は一切ありません。そして、書き終わったら、それぞれに「自分でコントロールできること」と「自分にはどうにもできないこと(ノーコントロールなこと)」の印を付けていきます。
やってみると、多くの心配が「どうにもできないこと」に分類されることに気づくはずです。昇進や昇給、景気、株価、将来の物価、年金制度など、自分の力だけではどうにもできないものが、世の中にはたくさんあります。そうした動かせないものに対して頭のなかでエネルギーを注いでいたと分かるだけでも、思考の音量は下がることでしょう。一方の「自分でコントロールできること」に残るのは、それほど多くなく、たいていは1つか2つだけでしょう。まずは、そこから手をつければ十分なのです。
2. 心配する時間を、あらかじめ決めておく
1日のなかに、10分だけ「お金のことを考える時間」を作ります。夜の21時から10分、といった感じで決めてしまいます。その時間以外に心配が顔を出したら、「21時に考えるからまたあとで」とだけつぶやいて、頭の外へと預けておきます。それだけで大丈夫ですので。
人間の脳は不思議なもので、時間を決めると、その枠のなかに収まりやすくなると言われています。まずは3日間だけ、試してみてください。
3. お金のかからない楽しみを、小さく取り戻す
お金のことばかりを考えてしまう毎日では、楽しみの選択肢まで「お金がかかるかどうか」で選ぶようになっていきます。ですので、あえてお金の要らないところから取り戻していきます。朝の散歩、図書館に行く、湯船にゆっくり浸かる、友人に久しぶりに連絡して会話を楽しむ、など。
目的は、気晴らしではありません。お金以外でも自分の体温を上げられるんだという感覚を思い出すことにあります。この感覚が戻ってくると、【問い2】でお伝えしたB『自己満足』を選ぶときの基準が、ご自身のなかでよりクリアになっていきますので。
あわせて、体を動かすことと、しっかり眠ることも効果的だと言われています。考えすぎは一見すると頭だけの問題に見えて、実は身体の状態にもかなり左右されるものだからです。
あなたはお金を使う側、それともお金に使われる側?
3つの問いがたどり着いた、たったひとつの場所〜不安が語っていたのは、お金のことではなかった
「お金が減っていくのが不安なんです」というご相談を受けて、詳しくお話を伺っていくと、途中から出てくる言葉がお金の話ではなくなっていく、ということがよくあります。
「お金が減っていくと、妻が何と言うか」「お金がなくなったら、周りの人に何か言われそうで」「万一のとき、家族になんと説明すればいいのか」。こうして並べてみると、語られているのはお金そのものではなく、人との関係性であることがとても多いのです。
ただ、ここで止まってしまうと「不安の正体は人間関係だった」という陳腐なお話で終わってしまいます。ここで、気になっているのは、奥さまの機嫌そのものでも、周囲の人たちの言葉そのものでもありません。相手の目に映った、自分の価値のほうなのです。収入が減った自分に、そばにいてもらう資格があるのか。お金がなくなった自分とつきあってくれる人なんているのか。お金の不安が、人との関係性という形で出てくるのは、これが理由なのです。
同じことが「課題と欲求のすり替え」という形でも起きます。本音では「もっと自分の好きなようにやりたい」という欲求がある。ところが、過去の経験から「自分の好きにやると、大切な人が離れていく」という設定が入っている場合、その一歩を無意識にご自身で止めてしまうのです。この設定を裏返すと、「ありのままの自分には、人がそばにいてくれるだけの価値がない」となります。だからこそ動けず、動けない違和感の理由を、無意識にお金のせいにしてしまうのです。
お金のご相談のなかで、こういうケースは本当に多いと感じています。特に『温かいお金』と『冷たいお金』の区別がついていない場合、かなりの確率で、お金が問題ではないのにお金が問題だと思い込んで、人生がうまくいかない理由をお金のせいにして、自ら生きづらくしてしまっている、ということがよく起こっています。
この記事の3つの問いを並べてみると、行き着く場所は同じでした。
- 【問い1】頭から離れないのは、自分の価値を残高という数字で採点している状態
- 【問い2】散財も節約も、自分のためにお金を使う許可を自分に出せていない状態
- 【問い3】考えすぎは、答えの出ない問いで自分を何度も採点し直している状態
3つに共通しているのは、自分の価値を疑いながら、お金のことを考えているということ。だから、いくら残高が増えても終わりませんし、たとえお金が増えたとしても、一瞬は安心して、また次の瞬間にはもっと必要な気がしてくるのです。
もう一度お伝えします。銀行口座残高が示しているのは、社会からの「信用」の記録であって、あなたという人の価値の通信簿ではありません。あなたがこれまで誰かを助けてきたことや感謝されてきたことは『信頼残高』として確かに積み上がっています。ただ、この「信頼」は数字にはならないので、通帳のどこにも載らないだけなのです。
お金のことばかり考えてしまう毎日というのは、目に見えて数値化された『冷たいお金』だけを何度も数えて、目に見えず数値化されない『温かいお金』のほうの残高をゼロとみなしている状態だと言えるでしょう。
自己採点をやめたとき、口座残高よりも先に変わるもの
では、自分の価値を疑いながらお金のことを考える癖がゆるんだとき、最初に動くのはどこだと思われますか?実は口座残高ではないのです。先に変わるのは、日々使う言葉と、選択と表情のほうなのです。
日常のこんなシーンを思い浮かべてみると、分かりやすいかもしれません。人に何かをしてもらったときに、これまでは「すみません」と言っていたところが、「ありがとうございます」に変わる。褒められたときに打ち消さず、素直に受け取ることができるようになる。誘われた集まりに、断れないからではなく、行きたいから行くと判断できるようになる。どれも小さな変化ですが、この積み重ねが人との関係性を変えていくのです。
『お金モテ®』の「モテる」は、お金を追いかけて稼ぐことを意味しません。自分の『あり方』が調ってくると、まずは人との関係のほうが先に改善されていきます。その関係性を経由して、時間差でお金はあとからやって来るのです。お金は基本的に人を通じてやってきますから、人との関係性が変わりはじめると、お金の流れも自ずと変わっていくのです。
ということで、今日からすぐに試すことのできる小さな方法をご紹介します。心のなかで浮かんだ言葉の、接続詞だけを変えてみてください。「私は今のままで十分だ。”でも…”」から、「私は今のままで十分だ。なので〜」へ。
「でも」でつなぐと、そのあとに続くのは足りない理由のほうになりがちです。一方、「なので」でつなぐと、そのあとには次の一歩が続きやすくなります。同じ自分について語っているのに、続く言葉がまるで変わってくるのです。これは潜在意識レベルでの思い込みに、日常の言葉を使って触れていく作業になるので効果的だと言えるでしょう。
もうひとつ、先ほどのB自己満足を選ぶ練習を、3日間だけ記録に残してみましょう。手帳の隅に「今日はこれを選んだ」と一行書くだけで構いません。狙いは記録そのものではなく、自分のためにお金を使えたという事実を目で見えるところに置いておくことのほう。頭のなかだけだと、選んだ事実を翌日には忘れてしまいやすくなりますので。ですので、まずは3日間だけ試してみてください。体感レベルで変化を感じられますので。
私自身、独立して10年以上が経ちました。この間、『冷たいお金』の数字は何度も上下しました。正直、心細くなった時期もあります。それでもここまで続けることができたのは、数字が守ってくれたからではなく、それまでの人との繋がりを通じた『信頼残高』があったからこそ。数字しか見えていなかった頃には、まったく見えていなかったもののほうに支えられ、ここまで来ることができたのです。

家計の見える化、固定費の見直し、一人で抱えないための相談先
ここまで『あり方』のお話が続きましたので、具体的なやり方のお話を最後にしておきたいと思います。
家計の見える化は、家計簿よりも『4つの窓』で
見える化というと、レシートを1円単位で記録する家計簿を思い浮かべる方が多いのですが、お金のことばかり考えてしまっている状態の方に、細かい記帳はあまりオススメしていません。数字と向き合う時間が増えて、むしろ心配の材料が増えることにつながりやすいからです。
それよりも、先月のカード明細と銀行口座の引き落とし状況を眺めながら、大きめの支出が『4つの窓』のどこに入るのか、仕分けてみることをオススメします。Aなら『自己投資』、Bなら『自己満足』、Cなら”事故投資”、Dなら”必要経費”。おおまかで結構です。1回やるだけで、ご自身のお金の使い方の傾向が見えてきますので。
固定費は「今の自分に必要か」で見直す
固定費の見直しが強いのは、1回考えるだけで効果が毎月続くからです。使っていない動画や音楽のサブスク、行かなくなったジム、内容を覚えていない保険、通信プラン、惰性で払い続けている会費など。
問いは「安いか高いか」ではなく、「今の自分に必要かどうか」のほうです。繰り返しになりますが、浮いたお金は貯金にすべて回さずに、一部だけでも大丈夫ですのでBの『自己満足』へと流してみましょう。削るだけで終わると、暮らしから体温が上がる感覚が抜け落ちてしまい逆効果ですので。
安心の土台を、先に確保しておく
もうひとつ、『冷たいお金』の側でやっておくと効くのが、生活費の数ヶ月分を「動かさないお金」として分けておくことです。金額よりも、置き場所を分けることのほうが効果があります。同じ口座に入れたままだと、残高を見るたびに使うことのできる金額と混ざってしまい、また数えることになってしまうからです。給料日に自動で別口座へ移す設定にしておけば、意志の力を使わずに積み上がっていきます。この土台があると、「なくなったらどうしよう」という未来の不安が少しだけ弱まりますので。
収入の側に選択肢を増やすことも、もちろん助けになります。転職も副業も、選べる道が1本しかないという感覚をゆるめてくれます。ただ、焦りからはじめた副業は【問い2】のC”事故投資”になりやすいですので、体温が上がるかどうかを先に確かめてからのほうが安全だと言えるでしょう。
逆に、避けていただきたい方法もお伝えしておきます。不安を一発で消そうとして、ギャンブル的に短期でお金を稼ごう、儲けようとすること。これは全てNGです。また、目先の支払いを軽く見せるためだけに、リボ払いやキャッシングで先送りすることも御法度。当然ですが、正規の登録のない業者からお金を借りることは絶対に避けましょう。どれも、目の前の不安を一瞬薄めてくれる代わりに、あとから確実な重荷となって返ってきますので。私が1,000万円超を溶かしたときも、動機は「早く不安を消したい」という焦りでした。この状態で選びがちな手段はろくなことになりませんので、十分ご注意ください。
お金の不安を一人で抱え込まないための相談先一覧
もし、返済や生活費のことで現実的に困っていらっしゃるなら、一人で抱え込まないでいただきたいと思います。無料で相談することのできる公的な窓口が、用意されていますので、まずはこちらにご相談されることをオススメします。
- 暮らし全般・家計の立て直し……生活困窮者自立支援制度(厚生労働省)の自立相談支援機関。お住まいの地域の窓口で、支援員の方が一緒に計画を立ててくださいます。
- 借金・返済のこと……法テラス(日本司法支援センター)。条件を満たせば、弁護士・司法書士への相談を無料で受けることができます。
- 契約や請求のトラブル……全国の消費生活センター等(国民生活センター)。消費者ホットライン「188」に電話をかけると、お近くの窓口につながります。
特に、第三者に相談することはとても大切です。人に話すという行為そのものが、【問い3】でお伝えした「頭の外に出す」作業にもなります。声に出した瞬間に、頭のなかでとても手に負えないように見えていた不安が、意外とそうでもなく、なんとか対処できると気づけることも多いですので。
お金のことばかり考えてしまうときの、よくあるご質問
お金への執着がすごい人の特徴は?
お金が好きすぎるというよりも、お金を通じて自分の安全と価値を確かめ続けていないと落ち着かない、という状態だと言えます。残高を自分の価値を測る点数として見ている、「なくなる」という恐れがいつも先回りしている、他人のモノサシで自分の暮らしを採点している、受け取ることが苦手でお金の流れが目詰まりを起こしている。この4つが重なっていることが多いものです。握りしめること自体をゆるめていく手順については、執着を手放す5つのステップのほうでお伝えしています。
散財癖のある人の特徴は?
散財する方と節約する方は、正反対に見えて実は同じところでつまずいていることが多い傾向にあります。どちらも『4つの窓』のBにあたる『自己満足』が空っぽで、自分のためにお金を使う許可を自分に出すことができていないのです。
考えすぎの癖はどうやって治すの?
治すというよりも、ゆるめると考えるほうが近いです。心配を紙に書き出して頭の外に出す、心配する時間をあらかじめ決めておく、お金のかからない楽しみを思い出す。まずは、この3つから試してみてください。
人生で一番無駄な買い物は何ですか?
金額の大きさで決まるものではありません。『4つの窓』で言えば、Cの”事故投資”——自己投資のつもりで支払ったのに、手元に何も残らなかったものがそれにあたります。私自で言えば、株とFXの1,000万円超がここに該当します。
おわりに
お金のことを考えなくなる日は、おそらく来ないでしょう。いや、むしろ来なくていいのだと私は思っています。『冷たいお金』は暮らしを守る『土台』ですから、考えることそのものは、むしろ大事なことなのですから。
一方でやめたほうがいいのは、お金について考えることではなく、自分の価値を疑いながら考えることのほうだと言えます。残高を見るたびに自分を採点する、あの癖のほうです。
お金は、今のあなたの『あり方』を映す鏡でもあります。あなたが自分を疑いながらお金を眺めれば、お金もまた疑わしい顔をして映し返してきます。逆に、今のご自身を認めたところから眺め直してみれば、同じ残高でも、まったく違う表情に見えてくるものなのです。
今月も残高ばかり見てしまうご自身を、どうか責めないでいただきたいなと思っています。それだけ真剣に暮らしを守ろうとしてきた証なのですから。そのうえで、ぜひ、そのままのご自分を認めてあげるところからはじめられてみてください。そうすれば、お金との関係性は温かいものへと少しずつ変わりはじめていきますので。まずは今日、体温の上がるお金の使い方をひとつだけ選ぶところからスタートされることをオススメします。どうか、あなたとお金との関係性が、よりよいものへとなっていきますように。
あなたがお金のことを考えるとき
見ているのは数字?それとも数字以外?


