お金は稼ぐより使う方が難しい|理由と『4つの窓』

「お金は稼ぐより使う方が難しい」お金の世界にある程度長くいる人ほど、なぜかこの言葉に深くうなずきます。稼ぐことに必死だった頃には、まさか「使うほう」で悩む日が来るとは思わなかった、という声も少なくありません。
パナソニックの創業者・松下幸之助さんは、こう言い切りました。「儲けるほうが楽ですわ。(中略)お金を儲けることよりも使うほうがむずかしい。3倍はむずかしいな」と。
宝くじで高額当選した人が、かえって不幸になってしまう、という話も、突きつめれば同じ構造です。大金が入ってきても、それを使う力が育っていなければ、お金はただ通り過ぎていくだけ。当たっても幸せになれない人には、「お金の使い道を先に持っていない」という共通点があるのです。
この記事では、なぜ稼ぐより使うほうが難しいのかを心の仕組みから紐解きながら、一般的な〈消費・浪費・投資〉の先にある『4つの窓』という見方、そして今日から動かせる小さな一歩までをお伝えします。
お金は稼ぐより使う方が難しい、とは?意味と背景
まず、この言葉の意味をはっきりさせておきましょう。
稼ぐことには、ある程度の「正解」があります。売上を増やす、単価を上げる、時間を効率化する、スキルを身につける。やり方は無数にあっても、「増えたか、増えなかったか」というものさしが一本通っています。うまくいったかどうかを、数字が教えてくれるのです。
ところが使うほうには、ものさしがありません。3万円の支出が正解だったのか、失敗だったのか。それを判定できるのは、世の中でもインターネットでもなく、自分だけ。しかも答えが出るのは、使った瞬間ではなく、何年も経ってからだったりします。
松下幸之助さんは「使ったら必ず効果がないとあかんやろ。効果のある使い方というのはむずかしいでっせ」と語りました。ビル・ゲイツも、お金を上手に使うことは稼ぐことと同じくらい難しい、という趣旨のことを述べています。そして富裕層と呼ばれる人たちほど、稼ぎ方より使い方の話を熱心にする傾向にあります。理由はシンプルで、稼ぐ力は再現できても、使う力は知識として教わるだけでは身につかず、自分で使いながら育てるしかないからです。
言い換えれば、稼ぐのは「技術」の問題、使うのは『あり方』の問題。だから難しいし、だからこそ、お金が増えたときに差が出てしまいやすいのです。
なぜ稼ぐより使う方が難しいのか
ここで、もう少し掘り下げてみましょう。なぜ私たちは、お金を使うことがこんなにも下手なのでしょうか。その答えは人間の心の仕組みにあります。
人間にはできるだけ現状を維持しようとするメカニズムが心の仕組みとして生まれながらにして備わっています。そのメカニズムに深く関係しているのが、心の領域として知られる潜在意識と呼ばれる部分です。
潜在意識にはホメオスタシス(恒常性維持機能)と呼ばれるはたらきがあるとされていて、これは、寝ている間に呼吸をするのと同じように、無意識に今の状態を維持しようとするもので、人類が長い進化の過程で生き残るために獲得してきた非常に重要な能力のひとつなのです。
そして、実はこのホメオスタシスこそが、大金を手にしてもお金持ちにも幸せにもなれない大きな原因だと私は考えています。ある程度自由に使えるお金を持っているのが当たり前の人が大金を手にしたとしても、お金を持っている状態を無意識に維持することができます。
一方で、お金に余裕がない状態が当たり前になっている人が、仮に宝くじに大当たりして7億円もの大金を手にしたとしても、無意識にお金を持っていない状態のほうを維持しようとしてしまうのです。
よくある典型的なパターンは、手に余る大金を手にしても、そもそもその大金を使いこなす力が育っていないために、無意識のうちに、これまでの生活習慣のなかで染みついた消費行動をとってしまい、大半は、お金を無くして元の状態に戻ってしまう、というものです。
貯金をする、家を買う、車を買う、海外旅行へ行く、ローンを返済する。現状を維持するか、これまでと同じ使い方をするかしか選択肢に浮かばず、自己投資や、資産運用、ビジネスといった、これまで選んでこなかった使い方を選ぶことができない。
問題は金額が増えるか減るかではなく、選べる使い道が狭いままだということです。これは意志が弱いからではありません。単純に、その使い方が「自分の当たり前」の中に入っていないから選べないのです。
しかも一度生活レベルを上げてしまうと、それを下げることは非常に困難で、減っていく一方の口座残高を眺めながら、不安や恐れを感じるようになります。
海外では「高額当選者の多くが、数年のうちにその大金を失ってしまう」とも言われるほどで、大金を扱えるだけの心の準備とお金に対する知識がない人は、むしろ大金を手にしないほうが幸せなのかもしれません。
稼ぐほうは、外の世界が相手です。でも使うほうは、このホメオスタシスという内側の自分と向き合うことになる。そう考えると難しくて当たり前なのも頷けます。

一般的には〈消費・浪費・投資〉。ただお金モテでは『4つの窓』で見ます
お金の使い方を学ぼうとすると、最初に出会うのがこの3分類ではないでしょうか。
- 消費・・・生活に必要な支出。家賃、食費、光熱費など
- 浪費・・・なくてもよかった無駄な支出
- 投資・・・将来の自分に返ってくる支出
とても分かりやすい整理です。家計を見直す第一歩としては、今でも十分に役に立ちます。
ただ、この分け方をしばらく使っていると、多くの人がある壁にぶつかります。「これは浪費なのか、投資なのか」が判定できないという壁です。
同じ1万円のセミナー代でも、そこから人生が動いた人にとっては投資ですし、資料をカバンに入れたまま忘れてしまった人にとっては浪費になります。同じ2千円のランチでも、ただの惰性のときもあれば、そこで気持ちが立て直せて翌日の仕事が捗ることもある。使い道と金額だけで分類しようとすると、そこに使った人の心がすっぽりと抜け落ちてしまうのです。
そこでお金モテでは、お金の使い方を『4つの窓』で見ていきます。使い道ではなく、縦軸に「使ったときに自分の体温が上がるか(心が動くか)どうか」、横軸に「未来の自分に返ってくるかどうか」を取った、2×2の窓です。
- A|自己投資・・・体温が上がる × 未来に返ってくる。学び、経験、人との出会い。心も動くし、後から効いてくるお金
- B|自己満足・・・体温が上がる × 未来には返ってこない。好きなものを買う、応援する、誰かにごちそうする。「意味」より「うれしさ」で選ぶお金
- C|事故投資・・・体温が上がらない × 未来に返ってくる「はず」だった。焦りや不安から買って結果が得られなかった教材、焦って大損した投資など。自己投資が”事故投資”に変わるのは、この窓です
- D|必要経費・・・体温が上がらない × 未来にも返ってこない。生活を回すために出ていくお金
特徴的なのは、Bの『自己満足』を悪者にしていないところです。一般的な分類なら真っ先に「浪費」と切り捨てられる窓ですが、お金モテでは違います。ここは、お金が「自分の人生に効く実感」に変わる大事な窓だからです。

使い方が難しい人ほどD必要経費に偏る|D→Bへシフトする
では、お金の使い方が難しいと感じている人の支出は、この4つの窓のどこに集まっているのか。
ほとんどの場合、D『必要経費』に偏っています。
家賃、光熱費、通信費、保険、税金、日用品。気づけば口座から出ていくお金の大半が「出さざるを得ないもの」で埋まっていて、自分の意思で選んだお金が、ひと月の中に一円もないという状態になっているケースもあります。これが「お金が入ってきても、なんだか満たされない」の正体なのです。
しかもDは、見直せる無駄が紛れ込みやすい窓でもあります。もう使っていないサブスク、惰性で続けている契約、なんとなく毎回買っているもの。「必要」というラベルが貼られているせいで、無意識に疑う対象から外れてしまいやすいのです。
そこで提案したいのが、D必要経費→B自己満足へのシフトです。
やることは2つだけ。ひとつは、Dに紛れている「見直せる無駄」をひとつ削ること。もうひとつは、そこで浮いたお金を、Bの窓へ意識的に流すことです。
判断軸はシンプルで、「使ったときに自分の体温が上がるかどうか」、それだけ。得か損か、意味があるかないかは、いったん脇に置いてください。
増える使い方を選べなかったのも、体温で選べないのも、同じ理由です。選んだ経験がない使い方は、選択肢として浮かんでこないのです。だからまず、小さな金額で「自分で選んで使う」経験をつくります。
特に大事なのは、金額は小さくていいということ。月1,500円のサブスクをやめて、その分で大好きなコーヒーをホテルラウンジで飲む。テーブルにお花を飾る。お世話になっている方へのちいさなプレゼントを買う。それで十分です。小さな金額で「自分で選んで使った」という経験を繰り返すことを通じて、お金を上手に使う力が育っていくのです。
この小さな一歩が積み重なると、ときにはBがAへと育っていくことも。素直に心が動いた場所には人が集まり、人が集まる場所には次の機会が生まれやすくなっていくのです。

それでも使えないのはなぜか|罪悪感と将来不安
とはいえ、「体温が上がることに使いましょう」と言われて、すぐに動ける人ばかりではありません。
自分のためにお金を使おうとすると、罪悪感が顔を出す。まだ余裕がないのに、家族のことを考えたら、こんなことに使っていいのだろうか、と。そしてもうひとつが将来不安です。老後、病気、収入が途絶えたら。この2つが揃うと、お金は口座から一歩も動けなくなります。
ここで押さえておきたいのは、これは節約の問題ではなく、実は順番の問題だということ。自分が空っぽのままでは、誰かに与えることはできません。だからお金モテでは、『満たす→調える→与える→受け取る』という循環する流れでお金を見ていきます。まずは自分を満たすこと。次に『あり方』を調えること。そのうえで与えること。すると、上手に使ったお金ほど巡り巡って受け取れるようになっていくのです。
Bの窓にお金を使うことは、この循環の最初のスイッチ「自分を満たす」ことでもあるのです。詳しくは自分のためにお金を使えないのはなぜ?お金使えない症候群の正体にまとめていますので参考にされてください。
『使うほうが3倍むずかしい』松下幸之助の言葉が教えてくれること
ここで冒頭の言葉に戻りましょう。
日本を代表する経営者・松下幸之助の金銭哲学のなかで、松下幸之助さんは「お金を儲けるのと使うのはどちらがむずかしいですか」と問われて、こう答えています。
「それは使うほうがむずかしい。儲けるほうが楽ですわ。使ったら必ず効果がないとあかんやろ。効果のある使い方というのはむずかしいでっせ。だから、お金を儲けることよりも使うほうがむずかしい。3倍はむずかしいな」
一代であれだけの大事業を築いた人が、稼ぐより使うほうが3倍むずかしいと言い切っている。ここは何度でも噛みしめたいところです。
そして、その難しさに気づかないまま「なんとなく」使ってしまうと、お金は浪費に消え、詐欺のターゲットになり、おこぼれを求めて近づいてくる人とのトラブルを招きます。お金というのは、その人の心の器の大きさによって扱える量が決まっているからです(この点はお金の器を育てる話で詳しく書いています)。
だからこそ、宝くじの高額当選者には「【その日】から読む本 突然の幸運に戸惑わないために」という非売品の冊子が用意されているほどです。その内容から見えてくる要点は、次の3つでした。
- (1)使い道をあらかじめ決めておくこと
- (2)誰に話をするのか(もしくはしないのか)を決めて、それを必ず守ること
- (3)使わない(使えない)お金の運用方法をあらかじめ決めておくこと
これは大金を手にした人だけの話ではありません。普段の私たちの言葉に翻訳すると、「使う前に、自分の基準を持っておくこと」ということを意味します。
何のために使うのかを先に決めておく。誰と分かち合い、誰に相談するのかを決めておく。使わないお金の置き場所を決めておく。この3つが自分の中にあるかどうかで、同じ1万円でもまったく違ってくるのです。
逆に言えば、基準を持たないまま金額だけが増えると、判断はいつも「なんとなく」になってしまいがちに。使うのが難しいのは、金額が大きいからではなく、基準がないまま使おうとするからなのです。
もし今、まとまったお金が入ってきたら。
あなたのお金は巡る側?それとも、消えていく側?
お金と幸せの両方を手に入れる、お金の『あり方』
使い方が難しいのは、支出だけの話ではありません。「何にお金を託すのか」を選ぶ場面でも、同じ難しさが顔を出します。
ところで実は私も、外れたほうが嬉しい”宝くじ”を買って持っています。その名を「生命保険」と言います。掛け金は月々数千円、万一のときに数千万円が支払われる。仕組みとしては宝くじと同じですが、事故にも病気にも遭わなかった(外れた)ほうが嬉しいので、私はこれを『逆宝くじ』と呼んでいます。
損失は小さく、当たったときの見返りは大きい。この性質を『非対称性』と言います。非合理だと分かっていても人が宝くじを買い、私が生命保険に入るのは、この非対称性に惹かれるからです(この話は『逆宝くじ』としての生命保険の考え方に詳しく書いています)。
宝くじも生命保険も、お金を託す先を自分で選んでいるという点では同じです(宝くじを選ばないという判断については欲しい時ほどお金が遠ざかるしくみでお話ししています)。そして何を選ぶかは、その人がお金に何を期待しているかで決まります。だからこそ、額そのものより、受け取る側の状態が効いてくるのです。
ここで、お金を考えるうえで極めて重要なことがあります。それは、人間は大金を得るだけで幸せになれるとは限らない、ということ。
米国プリンストン大学のカーネマン教授らは、かつて「年収約7万5000ドルを超えると、感情的な幸福度は頭打ちになる」と発表しました(カーネマン=ディートン、2010年)。長らく定説とされてきましたが、この結論は近年の研究で塗り替えられます。
カーネマン教授自身も加わった2023年の共同研究では、多くの人は収入が増えるほど幸福度も上がり続ける一方、もともと不安や生きづらさを抱えた一部の人だけが、ある水準(年収約10万ドル=約1,500万円)で頭打ちになると分かってきました(出典:米プリンストン大学・ペンシルベニア大学 Killingsworth=Kahneman=Mellers 2023年共同研究/Penn Today)。
ここから見えてくるのは、収入が増えても幸福度が頭打ちになるかどうかを分けるのは、額そのものよりも、それを受け取る人の『あり方』や心の状態のほうだということ。同じ金額を手にしても、満たされる人と満たされない人に分かれるのは、まさにここに理由があるのです。
では、どうすればいいのか?と言えば、生き方の基準、価値観をお金だけにしないことに尽きます。確かに生活の満足度を高めるにはお金は絶対に必要です。でも、お金だけでは幸せな人生が手に入らないのもまた事実なのです。
私は、使い道のない大金を手にすることよりも、実現したい未来が先にあって、そのためにお金を求めるのが幸せな人生だと考えています。そして、お金の使い道も、自分の欲望を満たすためだけに使うのではなく、誰かと一緒に楽しいひとときを過ごしたり、誰かに喜んで貰うために使ったり、誰かの活動を応援するために使える人のほうが、より幸せになれるように感じるのです。
なぜなら人生の充実感や幸福感は1人ぼっちでは決して実感することができないからです。人生には自分以外の他者との関係性が常にあり、その関係が良好なときにしか、人生の充実感や幸福感を感じることができないのが人間という生き物なのですから。
私自身、独立して10年以上この仕事を続けてこられたのも、稼ぎ方の技術というより、こうしたお金との向き合い方——つまり『あり方』のほうを見つめ続けてきたからだと感じています。
お金は、自分の『あり方』を映す鏡。使い方が難しいのは、お金が難しいのではなく、鏡に映った自分と向き合うことが難しいからだと言えるでしょう。だからこそ、金額そのものではなく、それを扱う自分の『あり方』のほうを、先に調えておくことが何より大切なのだと私は考えています。
今の自分はお金とどんな『あり方』で向き合っているのか。それを性格診断ではなく、今この瞬間の状態として映してくれるのが、私のご用意しているお金モテ冒険者タイプ診断(8タイプ)です。ぜひ、心の奥をのぞく手がかりとして、一度試してみてください。きっと、今まで気づいていなかった新しい発見があると思いますので。
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