お金があっても満たされないのはなぜ? 2つのお金でわかる本当の理由

「これだけあれば安心だと思っていたのに」。銀行口座の残高は、以前よりも確実に増えている。欲しかったものも、我慢せずに買うことができるようになった。それなのに、ひとりになった夜に、胸のどこかがぽっかりと空いたような満たされない感覚がある。そんな経験はありませんか?
結論を先にお伝えすると、その満たされなさは、『温かいお金』が不足していることを知らせるサインだと言えます。まずは、いまのご自身の状態をチェックしてみましょう。
- 口座残高は増えているはずなのに、なぜか、この先の不安が減らない。
- せっかく買ったのに、家に着く頃にはどうでもよくなっていることがある。
- お金の話をすることはできても、心から喜び合うことのできる相手がいない。
いかがでしょうか?もし、1つでも当てはまるようでしたら、原因は『温かいお金』が不足して、『冷たいお金』過剰になっている可能性が高いと言えます。
私は独立して10年以上、「お金モテ®」という考え方をお伝えしてきました。ですが、昔は「お金が欲しいなら、とにかく稼げばいい」と信じて疑わず、お金を追いかけていました。結果、株とFXで1,000万円超を溶かすという失敗をしています。思い返せば、数字を追いかけていたときは、どんなに口座残高が増えても、満たされない感覚が強く残っていました。
この記事では、よくいただく3つのご質問に順番にお答えしたうえで、その3つに共通する原因と、『温かいお金』と『冷たいお金』のどちらに偏っているのかを見分けて、バランスを取り戻す方法をお伝えします。
お金があっても満たされないのは、なぜ?
理由は、解決しようとしている課題そのものがズレているからです。
「お金が問題なのだから、お金をなんとかしなきゃ」。そう考えて、年収を上げる努力をし、投資で利益を追い、おトク技を駆使する。とても合理的ですし、論理的にはどこも間違っていません。私自身も、おトクなことは大好物です。ですが、この方向にだけ偏ってしまうと、満たされなさは一向に減ることはないと言えるでしょう。
この点については、お金に関する有名な研究でも決着がついています。長らく「年収が一定の水準を超えると、幸福感は頭打ちになる」と言われてきたのですが、2023年、正反対の結論を出していた2人の研究者が、第三者を立てて共同で再検証しました。
その結果、収入が増えるほど幸福感も上がっていく人が大半である一方、もともと満たされていない層では、収入がある水準を超えても、その苦しさは減らないということがわかったのです(Killingsworth, Kahneman & Mellers「Income and emotional well-being: A conflict resolved」PNAS 2023)。
つまり「お金があっても満たされない」という感覚は、気のせいでも、贅沢を言っているのでもなく、どんなにお金の量を増やしても減らない苦しさが、実際に存在するということなのです。
ここで区別しておきたいのが、2種類のお金です。ひとつは『冷たいお金』。社会的な「信用」から生まれる、お給料や預貯金や資産額のように、数字でハッキリと管理することのできるお金です。暮らしを守る『土台』であり、この土台があるからこそ、人は落ち着いて次の一歩へと挑戦することができるようになります。
もうひとつが『温かいお金』です。こちらは人との「信頼」から生まれる、いわゆる『信頼残高』のことで、目にはみえず、数値化することのできない非言語のお金になります。人に喜ばれ、感謝されたときに受け取ることのできるお金で、冒頭でお伝えした「不足しているもの」が、これにあたります。詳しくは3つ目のご質問のなかでお伝えしますので、ここでは数字で測ることのできるお金と、測ることのできないお金の2つがあるとだけ押さえておいてください。
また、2つのお金の温度の違いは、お金の循環と金銭感覚で詳しくお伝えしていますので、定義をじっくり確かめたい方は、そちらもあわせてご覧ください。
ただ、冷たいお金の役割は、あくまで生活を守ることにあります。確かに安心はくれますが、満たされる感覚そのものを生み出す働きは持っていません。ですので、すでに満たされなさを抱えている状態の場合、どれだけお金の量を増やしても、望む変化は得られないのです。

買った瞬間だけ嬉しいのは、なぜ?|”無駄な買い物”が増えていく仕組み
レジを通った直後には満たされた感覚があったのに、家に帰る頃にはもう気持ちが冷めている。もしも、そんな買い物が続いてしまうときには、支出をお金の『4つの窓』で眺めてみると、何が起きているのかがわかるようになります。
横の軸に消費と投資、縦の軸に自分のエネルギー(体温)の高い低いを取ると、お金の使い道は4つに分かれます。この縦軸の体温は、自分のエネルギーが上がるのか下がるのかを見るものさしです。さきほどの冷たい・温かいというお金の性質とは別の軸になりますが、のちほどお伝えするとおり、体温が上がるお金の使い方こそ、冷たいお金を温かいお金に変えていくためのカギを握ります。
- A=『自己投資』(投資×高)。自分の可能性を広げてくれる学びや経験に、使うお金。
- B=『自己満足』(消費×高)。自分の体温が上がる、心地よい消費。
- C=”事故投資“(投資×低)。学びのつもりで支払ったのに、手元には何も残らず、使った金額だけが消えていった出費。私の株やFXでの大損が、まさにこれ。
- D=”必要経費”(消費×低)。家賃や光熱費のように、暮らしを維持するために仕方なく支払っているお金。
自分のためにお金を使うことができない方ほど、支出はDに偏りがちです。そして、Dばかりにお金を使う毎日に耐えられなくなると、埋め合わせのための買い物に走ってしまいやすくなります。また、そのときに選びがちな基準が「安いから」「みんなが持っているから」といった外側のものさしであることが多く、自分の体温が上がるかどうかで選んでいない傾向にあります。そのため、買った直後は嬉しくても、すぐにその余韻は消えてしまうのです。
手に入れたときの喜びが、時間とともに薄れて元の水準まで戻ってしまう。このメカニズムには「快楽適応」(うれしさに慣れてしまうこと)という名前が付いています。さらに、外側のものさしで選ぶとき、人は無意識のうちに他人と自分を比べています。これを「社会的比較」と言いますが、人と比べるほど、不安のほうが強くなりやすいと言われているのです。
そこで効いてくるのが、BとDの2つです。ただし、それには順番があります。まず先に取り組んだほうがいいのは、Bのほうです。判断の軸はひとつだけ。「このお金の使い方で、自分の体温(エネルギー)が上がる感じがするか?」です。金額は小さくてかまいません。金額の大きさよりも、Bにお金を使う回数を重ねていくことのほうがより効果的ですので。なぜBが先なのかというと、外側のものさしで選ぶクセが残ったまま支出だけを削ったとしても、浮いたお金は再び埋め合わせの買い物に使われてしまいやすいからです。
そのうえで、Dの見直しへと進みます。Dは「支払わざるを得ないもの」と思い込まれがちですが、実際には、使っていないサブスクや、惰性で続いたままの固定費のような”見直せる無駄”が紛れていることが多い場所でもあります。それを見つけたら、やめて減らします。そうして浮いたぶんを、体温の上がるBへと流していくことで、埋め合わせの買い物をしたくなる状態から抜け出すことができるのです。

お金があっても虚しいのは、何が足りないから?|貢献と喜ばれる実感
足りていないのは、『温かいお金』です。温かいお金は、人との良好な人間関係を通じた「信頼」から生まれるお金です。人に喜ばれ、感謝されたときに受け取ることのできる、ポジティブな感情を伴ったお金だと言えるでしょう。この残高が豊かな方ほど、人間関係に恵まれて、まわりから慕われながら、好きなお仕事で生計を立てているケースが多い傾向にあります。逆に、温かいお金が少ない方は、たとえ収入や口座残高がどんなに増えても、不安は消えず、孤独を感じやすくなります。
虚しさが生まれる仕組みは、とてもシンプルです。冷たいお金は数字で測ることができるぶん、「限りあるもの」として意識されやすく、競争や奪い合いを生みます。そうして、数字としてのお金を優先して過ごしていると、無意識に人よりもお金のほうを信じるようになりがちです。私はこうした状態の方を”お金真理教の信者”と呼んでいますが、そうなると気づかないうちに人が離れてしまうのです。稼ぐだけ稼いで、ほとんど使わずに貯め込んだ結果、人と信頼関係を築くことができず、孤立していった方を私はこれまでたくさん見聞きしてきました。
念のため、誤解のないように補足させていただくと、決して冷たいお金が間違っているわけではありません。冷たいお金と温かいお金の2つは、切り離すことのできないお金の裏表であり両輪で、どちらも必要です。問題なのは、冷たいお金そのものというよりも、冷温のバランスを崩して、冷たいお金だけに過度に偏ってしまうことなのです。
3つに共通する原因は、『温かいお金』の不足にあります
ここまで3つのご質問について順にみてきましたが、原因はそれぞれ別ものではありません。3つとも、ある共通する1つのことが形を変えて顕在化しているだけなのです。
1つ目の「増えたのに満たされない」のは、満たす役割を担っているのが温かいお金のほうだからです。冷たいお金は暮らしを守る大切な働きを持っていますが、満たす働きまでは持っていません。ですので、満たされなさを抱えたまま冷たいお金だけを積み上げても、決して満たされることはないのです。
2つ目の「買った瞬間だけ嬉しい」のは、冷たいお金が温かいお金に変わることなく、冷たいお金のままになっているからです。冷たいお金が温かいお金に変わるのは、自分の体温(エネルギー)が上がる感覚とともに支払ったお金が誰かに喜ばれて、人としての「信頼」となって返ってきたときです。
ところが、”必要経費”のDに偏った支出も、外側のものさしで選んだ埋め合わせの買い物も、体温(エネルギー)が上がる感覚はなく、誰かを喜ばせるためのお金の使い方にはなりません。結果、支払ったお金が冷たいお金のままで終わるのです。
3つ目の「虚しさや孤独」は、その状態のまま時間が経った結果です。数字としての冷たいお金がいくら積み上がったとしても、人としての信頼残高は増えません。人よりもお金のほうを信じてしまうクセが抜けない限り、人とはつながれず、虚しさや孤独が拭えないのです。
つまり、この3つは別々の悩みのようにみえて、1本の線でつながっていると言えます。そもそも、温かいお金が足りていない(1つ目)。冷たいお金が温かいお金に変わるためのルートを閉じてしまっている(2つ目)。その結果、時間とともに、まわりから人がいなくなる(3つ目)のです。
ひと言で言えば、冷たいお金は増えても、温かいお金が増えていない。この偏りこそが、満たされなさの根本原因なのです。
『冷たいお金』と『温かいお金』
いまのあなたはどっち寄り?

『冷たいお金』と『温かいお金』のどちらに偏っている?
それでは、ご自身がどちら側に偏っているのかを見分ける方法をお伝えします。ここまでは『冷たいお金』へ偏っている場合を中心にみてきましたが、反対側へ寄りすぎている場合もありますので、ここでは両方を並べておきます。
『冷たいお金』に偏っているときは、こんな状態です。
- 使い道のハッキリしない貯金を続けている。
- 売上や年収の数字が上がらないと、自分に価値がないように感じてしまう。
- 人よりも、お金や数字を信じる傾向が強い。
- 収入や資産は増えたのに、孤独を感じることが増えている。
- 人を喜ばせるためにお金を使うことが、どこか勿体なく感じる。
一方で、『温かいお金』に偏っているときは、こんな状態になります。
- 数字を見るのが苦手で、手元にいくら残っているのか把握できていない。
- お金を受け取ることに罪悪感があり、値上げすることに抵抗を感じる。
- 頼まれると断ることができず、無償や値引きで引き受けることが多い。
- 喜んでいただくために動き続けて、気づけば自分が疲弊している。
- 「お金は循環させるもの」と使い続けた結果、貯金や備えが心もとない状態になっている。
偏りを戻す4つのステップ|満たす→調える→与える→受け取る
偏りがわかったら、『満たす→調える→与える→受け取る』という順序で進めていくことで、バランスを取り戻すことができます。この順番そのものに意味がありますので、4ステップを順にお伝えします。
- 満たす:Bにあたる、自分の体温が上がるモノやサービスに意識的にお金を使う。
- 調える:Dを見直して、惰性で出ていく固定費を減らし、暮らしの土台となる冷たいお金の配分を見直す。
- 与える:自分が満たされる感覚が得られるようになったら、自分の体温が上がり、かつ、誰かに喜んでもらえるようなお金の使い方を実践していく。結果、冷たいお金が温かいお金に変わっていく。
- 受け取る:喜ばれた結果、循環してきたもの(お金、ご縁、チャンス、情報など)は、遠慮せずにしっかりと受け取る。そして再び「満たす」に戻る。
『冷たいお金』に偏っている場合、はじめの一歩は、「満たす」からになります。2つ目の質問で、Dの見直しよりも先にBを取り戻すとお伝えしたのは、この順序を守るためです。私の経験上、自分を満たすことを後回しにしたまま、無理に誰かに与えようとしても、長くは続かないからです。
一方、『温かいお金』に寄りすぎている場合に足りないのは、多くの場合「調える」と「受け取る」の2つです。暮らしの土台がしっかりしないまま、無理に与えようとしても、自分が疲弊して続けられません。また、受け取ることへの抵抗感が強いと、お金の流れを自ら止めてしまいます。誰かが喜んでくださったなら、素直に受け取りましょう。お金を受け取ることの本質は、相手から奪うことではなく、お金を世の中に循環させる役を引き受けることにあるのですから。

おわりに
お金があっても満たされないのは、『温かいお金』が不足していますよ、と教えてくれているサインだと言えます。口座残高が増えたのに満たされないのも、モノを買った瞬間だけ嬉しいのも、虚しさや孤独も、原因は同じで、冷たいお金と比べて、温かいお金が不足していることにあるのです。
お金は、スクリーンに映し出された影のようなものだと言えます。その影としてのお金には、いつもあなたの『あり方』が映し出されています。ぜひ今日から、お金を使う場面で「このお金の使い方は冷たい側かな、それとも温かい側かな」と自問自答されてみることをオススメします。その先に、上手にお金とつきあえる満たされた世界が待っていますので。
あなたのお金は、『冷たいお金』寄り?
それとも『温かいお金』寄り?
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